──任天堂が1995年に実装していた、“早すぎた配信サービス”、という話
mutoです。
1995年、任天堂はかなり異様なサービスを開始しています。
その名も、サテラビュー。
スーパーファミコンをBS衛星放送と接続し、
ゲームや各種コンテンツを“配信”するというシステムです。
1995年4月にサービスを開始し、価格は18,000円。
利用にはスーパーファミコン本体に加え、
BS衛星放送環境も必要でした。
配信されていたのは、ゲームだけではありません。
デジタル雑誌、ランキング、音声番組、そしてリアルタイム音声連動型ゲームである
「サウンドリンクゲーム」まで存在していた。
今読むと普通に感じるかもしれません。
しかし95年です。
まだ多くの家庭では、ゲームは店で買うものでした。
“ソフト”ではなく、“カセット”だった時代
当時は、
“ゲームソフト”というより、
“カセット”という感覚の方が近かった時代です。
箱があり、説明書があり、友達同士で貸し借りする。
コンテンツとは、物質そのものだったのです。

そんな時代に任天堂は、「通信によってゲームを受け取る」
という思想を持ち込んだ。
これは今思う以上に革命的でした。
今のオンライン配信を、95年にやっていた
しかも、サテラビューは単なるダウンロードサービスではありません。
決められた時間に番組形式で配信が行われ、
音声ナレーションと連動する「サウンドリンクゲーム」まで存在していた。
今で言えば、ライブ配信型イベントやオンラインゲーム運営に近い発想です。
NetflixもSteamも存在しない時代に、
任天堂はすでに“ネット配信時代のゲーム”をかなり具体的に想像していたわけです。
正直、凄すぎます。
ただ、時代が追いついていなかった
問題は、未来を作る側だけ先に行きすぎたことでした。
導入にはBS衛星放送環境が必要で、専用機器も必要。
当然ながら設定も簡単ではない。
そして何より、当時の一般家庭には
「通信でコンテンツを受け取る」
という感覚そのものがまだ根付いていませんでした。
今のように、データにお金を払う文化も無い。
ゲームとは、棚に並ぶ物体だったのです。
ファミ通で見た“未来”
私は当時、兄が読んでいたファミコン通信(ファミ通)でサテラビューを知りました。

中学生だった私は、普通にワクワクしていました。
「未来ってこうなるのか」と。
ゲームが宇宙から届く。
そんなSFみたいな話を、
天下の任天堂が本気でやろうとしていたのだから、
子供が興奮しないわけがありません。
“金持ちの家”にも無かった
ただ、そんな未来にワクワクしていた我が家に、
結局サテラビューが導入されることはありませんでした。
そしてこれは、うちだけではなかったと思います。
当時、私の友達にいわゆる“金持ちキャラ”がいました。
別に性格がスネ夫だったわけではありません。(笑)

ただ、「そいつの家に行けば、当時の最先端ゲームがだいたいある」
というタイプです。
新ハード。新ソフト、周辺機器。
ゲーム雑誌で見たものが、
いたい実在している。
子供ながらに、「すげぇな……」と思っていました。
そんな彼の家にも、サテラビューはありませんでした。
これが、当時のリアルだったのでしょう。
皆、未来は感じていた。
でも、まだそこに現実感が無かった。
高価な周辺機器というだけではなく、
“未来すぎてピンと来なかった”のだと思います。
そして、私は実物を見なかった
そして私は結局、一度もサテラビューの実機を見ることなく、
サービス終了を迎えました。
知ってはいる。
でも、実物は見たことがない。
私にとってサテラビューとは、
どこか都市伝説みたいな存在です。
日本は、確かに未来を見ていた
ただ、今の時代を見れば分かります。
ゲームも映画も音楽も、
今や全部“配信”で受け取る時代になりました。
スマホひとつで、世界中のコンテンツへアクセスできる。

つまり、サテラビューの発想そのものは、間違っていなかった。
単純に、20年早すぎたのです。
よく「失われた30年」と言われます。
確かに日本経済は苦しかった。
でも、90年代の日本企業には、
今振り返っても異常な熱量と技術的野心がありました。
携帯電話。液晶。ゲーム。通信。家電。
今の世界標準になっている概念の“原型”を、
日本企業はかなり早い段階で触っていたのです。
サテラビューもそのひとつだったのでしょう。
日本、まだまだ捨てたものじゃない
日本、すごかったんですよ。
そしてきっと、今だって同じです。
まだ世の中に理解されていないだけで、
日を浴びていない革新的な技術やサービスが、
日本のどこかで静かに生まれている。
サテラビューみたいに、
少し早く未来へ着き過ぎてしまっているだけなのかもしれません。
もちろん、私はそういう未来のガジェットを生み出す側の人間ではありません。
そんな能力が自分に無いことくらい、残念ですが分かっています。
ただ、未来を作ろうとする人たちにワクワクし、
その挑戦を面白がり、応援し続ける側ではいたい。
ファミ通を読みながら、「未来ってすげぇな」
と興奮していた、あの頃の少年みたいに。
今日のところは、以上!


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