mutoです。
毎日の晩酌はしないものの、酒が嫌いなわけではない私ですが
実は酒の味がそれほど分かっていません。(笑)
正確に言うと、それほど拘っていません。

ウイスキーもビールも、
飲み比べれば違いは分かる。
でも、
「響は角の20倍美味い!」
「このスコッチは革とナッツの香りが…」
みたいな世界にはあまりついていけません。
ビールだって、違いは分かる。
でも正直、「そこまで劇的か?」と思っています。
発泡酒とビールですら、居酒屋で出されたら正直あまり分からない。(笑)
そんな私ですが、「これは美味い」
と本気で感心した酒がありました。
キリン「澄みきり」という、異様に思想が強い商品
澄みきりです。

2013年5月発売の、いわゆる“新ジャンル”。
当時のビール系飲料市場は、
- コク
- 濃さ
- 飲みごたえ
- “ビールっぽさ”
を強める方向が主流でした。
そんな中で澄みきりは、かなり異質だった。
コンセプトは、
「力強く澄みきった、飲み飽きないうまさのニュー・スタンダード」
麦のうまみを残しつつ、雑味を削ぎ落とした、“澄みきる後味”。
さらにパッケージコンセプトは、なんと「KATANA(刀)」。
銀色主体の、シャープでストイックなデザインでした。
発売直後はかなり勢いもあり、
- 発売3か月で累計1億本突破
- 翌年には累計2億本突破
- 年間505万ケース販売
数字だけ見れば、十分ヒット商品だったと思います。
でも、定番にはなれなかった。
発売翌年にはリニューアル。
その後、店頭でほとんど見かけなくなっていきました。
私は、あの商品を“推して”いた
当時の私は30歳そこそこ。
地方営業から、
東京本社のマーケティング部門へ異動したタイミングでした。
「売る側」から、「作る側」へ。
商品コンセプトをネーミング、パッケージ、販促物などに落とし込む、
そういうものを考える仕事に関わり始めた時期でした。
だから私は、澄みきりに強く惹かれたのかもしれません。
- 雑味を削ぐ
- 軽やか
- 透明感
- 引き算の美学
そして何より、「キリンでしか作れないものを作ろう」と
高らかに宣言する気概に。
今思えば、新しい仕事を目の前にした若造であった私は
自分と商品を重ね合わせ、少々下駄を履かせていたのかもしれません。
ともに「一山当ててやろう」という野心に勝手に共感したのだと思います。
でもそれを差し引いても、私はあの商品を愛していました。
まさに“推し”でした。
そして、市場から消えた
……驚くほど早く。
私はあの時、かなりショックを受けました。
そして、マーケティングの残酷さを知った気がしました。
「良い商品」と「売れる商品」は違う。
市場で強いのは、
- 分かりやすい
- 飲みごたえがある
- すぐ伝わる
- 安心感がある
そういう商品だったりする。
そしてキリンは、「本麒麟」を当てた
その後、本麒麟が大ヒットしました。

真っ赤なラベル。
“本麒麟”という、いかにも王道感のあるネーミング。
そして、いわゆる「苦美味い」方向に寄せた味。
分かりやすい。強い。そりゃ売れるだろう、と思います。
もちろん、悪い商品ではない。
むしろ、大衆市場で勝つために、
徹底的に設計された優秀な商品なんだと思います。
でも正直、私はそこまで惹かれませんでした。
なんというか、“置きに行った感”が強すぎた。
もちろん、市場を取りに行くにはそれが正解なんでしょう。
でも、面白くない。
私はそう感じてしまったんです。
私は、今でも時々思い出す
あの、妙にクリアで、
妙に思想が強くて、「こんなの本当に売れるのか?」みたいな商品を。
澄みきりは市場から消えました。
でも、ああいう尖った商品を、今でもちゃんと覚えていて、
今でも好きだと言うファンがいることを、
キリンビールの開発部門の方には、
少しだけ覚えておいてほしいな、と思っています。
そして今でも、
コンビニの酒売り場を見るたびに、
時々あの銀色の缶を思い出します。
澄みきり。
見事に散ったけど、きちんと散れた、本当に良い商品だったと思うのです。
今日のところは、以上!


コメント