君はVineを知っているか? 天下を取り損ねた短尺動画SNSとそれに乗ったマーケティング担当者の野望、という話

サラリーマンの独り言

mutoです。

突然ですが、皆さんは**「Vine(ヴァイン)」**というSNSを知っているでしょうか?

「知っている人は知っている。知らない人は知らない。そして知っている人は今はほぼいない。」

令和の今となってはそういう評価のSNSです。

覚えているか?という方が近いかな?

TikTokがこれだけ世界中で流行するよりも前。

実は、それに近いことをやっていたSNSがありました。

その名は、Vine。

6秒という非常に短い動画を投稿し、それがループ再生されるSNSです。

2013年にサービスが始まり、Twitter傘下で展開されました。

そして2017年、動画投稿サービスとしての役割を終えます。

何を隠そう、私は会社員として、このVineを使ったマーケティング施策をやったことがあります。

結果ですか?

一言で言いましょう。

「無風」でした。

いや、「凪」と言った方が正しいかもしれません(笑)。

今日はそんな、華々しくもなんともない私の「Vineマーケティング」の思い出を書いてみたいと思います。

初めてVineを見た時、「これ流行るのか?」と思った

当時、私は30代中盤。

製品マーケティングの仕事をしていました。

そこで初めてVineというサービスの存在を知ります。

正直、「これ、流行るのか?」と思いました。

実際に画面も見ました。

でも感想は、「……?」でした(笑)。

そもそも短い動画をわざわざ見に行くという行動が、私にはよく理解できなかったのです。

ちなみに、当時マーケティングの仕事をしていなかったら、Vineという名前すら知らなかったと思います。

それくらい私の日常生活からは遠い存在でした。

「こういう新しいことをやらないのならマーケティングではない!」

そんな私とは対照的に、Vineに非常に前向きだった人物がいました。

何を隠そう、私の上司です。

「これから若年層を取り込むためには、こういう新しいサービスに積極的に乗り出さないといけない」

「今だからこそ先行者優位がある」

そして極めつけは、

「こういう新しいことをやらないのならマーケティングではない!」みたいな熱量でした。

私は、「うーん、本当にそうかなあ……」と思っていました。

とはいえ、会社員です。

上司がそこまで言うものに、「いや、私はVineには未来がないと思います!」と戦うほどの確信もありません。

そもそも私自身、Vineが失敗するという根拠を持っていたわけでもない。

ということで、押されました。そしてやりました。Vineマーケティング。

これも会社です(笑)。

6秒の動画を作ってみたら、意外と面白かった

ところが、実際に短尺動画を作ってみると、これが結構面白かった。

Vineは基本的に6秒です。

たった6秒。

商品を少しずつ動かして撮影する。また動かして撮影する。それをつなげる。

すると、パタパタ漫画というか、コマ撮りアニメのような動画になります。

私はいくつか作りましたが、個人的には結構好きでした。

短いからこそアイデアが必要になる。

6秒しかないから、余計なものを全部削らないといけない。

クリエイティブとしては、なかなか面白い遊びだったと思います。

そして正直に言いましょう。

完成した動画を見た時、「これ、結構いけるんじゃない?」と思いました。

いや。

もっと正直に言います。

「これで世間の話題をさらえるぜ!」くらい思っていました(笑)。

最初は「Vineって何が面白いんだ?」と思っていたくせに、完成した動画を見たらすっかりその気です。

そして、

「さすが上司だ! 新しいものに目をつける人は違う!」

くらいに思っていました。

人間なんてそんなものです(笑)。

そして結果は「凪」だった

さて。

そんな自信満々の動画を世の中に送り出した結果、何が起こったのか。

何も起こりませんでした。

好きでもない。嫌いでもない。面白いとも言われない。つまらないとも言われない。炎上すらしない。

「凪」です。

こちらとしては「これで世間の話題をさらえるぜ!」くらいの気持ちで船を出したのに、海面は恐ろしいほど穏やかなまま。

当たり前ですが数字にも結びつきませんでした。

マーケティングにおいて嫌われるより悲しいことがあるとすれば、誰にも気づかれないことなのかもしれません。

ただ、幸いなこともありました。大失敗して炎上したわけでもない。巨額の損失を出したわけでもない。

そもそも大して認識されていない。

だから誰からも責められませんでした。

ちなみに、ゴリゴリに推した上司も責任を取っていません。

当たり前ですが実行した私も責任を取っていません。

これも会社です(笑)。

少しだけ、当時の私に言い訳をさせてください

ここまで読むと、

「そんなよく分からないSNSで、本当に世間の話題をさらえると思っていたの?」と思うかもしれません。

なので、少しだけ言い訳をさせてください。

YouTubeだって、Facebookだって、X(当時のTwitter)だって、最初から巨大プラットフォームだったわけではありません。

小さなサービスとして始まり、いつしか国境を越え、社会のインフラと言っていいほどの存在になりました。

そして、その波に早くから乗った人たちの中から、HIKAKINやはじめしゃちょーのようなSNS長者も生まれた。

だったら、「Vineもそうなるんじゃないか?」というスケベ心があるのは普通じゃないですか?(笑)。

まだ多くの企業が本格的に参入していない。

そこに早くから入って面白い動画を出す。話題になって、商品も注目される。

そんな未来を夢見たとしても、そこまで無茶苦茶な話ではなかったと思うのです。

Vineが社会インフラになっていた世界線もあったはずだ

さらに妄想を膨らませましょう。

まかり間違ってVineがその後爆発的に普及し、YouTubeやXのような社会インフラになっていたらどうでしょう。

それをいち早くマーケティングに取り入れた担当者として、

「私には未来が見えていた」とかなんとか、今考えれば完全に後付けのきれいごとを偉そうに語りながら、『日経ビジネス』や『日経エンタテインメント!』あたりから取材を受けていた未来だってあったはずです。

そして、

「これからのマーケティングでは、生活者との新しい接点をいかに早く見つけるかが重要なんです」

とかなんとか言いながら、

腕の前でろくろを回すようなポーズを取っている私。

写真の横には、「短尺動画の可能性をいち早く見抜いたマーケター」みたいな見出しが付いている。

そんな未来があったかもしれない(笑)。

だから、動画が完成した時に、「これで世間の話題をさらえるぜ!」と思った当時の私を、あまり責めないでいただきたい。

狙っていた場所は、そこまでおかしくなかったと思うのです。

ただし現実は、「凪」でしたけどね。

ろくろを回す機会はありませんでした(笑)。

Vineは消えた。でも短尺動画は消えなかった

そしてVineは消えました。

ところが面白いことに、短尺動画という考え方そのものは消えませんでした。

その後、世界中で爆発的に広がったのが、TikTokです。

もちろん、VineとTikTokではサービスの設計もアルゴリズムも違うのでしょう。

正直に言います。私は今でもVineとTikTokの違いがよく分かっていません(笑)。

ちなみに私は今もTikTokをやっていません。

だから、「TikTokのアルゴリズムがどうだ」「ショート動画マーケティングはこうあるべきだ」

なんて偉そうに語るつもりはありません。というか語れません。

分からないものは分からない。(笑)

↓これ読んでいれば、もう少し結果は違ったのかも?とか思ったりしています。

それでも、Vineをやったことを少しだけ誇りに思っている

ここまで散々笑い話にしてきましたが、私はVine施策をやったことを後悔しているわけではありません。

少なくとも当時、

まだ誰も正解を知らなかった短尺動画という世界に、会社として手を伸ばした。

これは事実です。

「よく分からないからやめておこう」ではなく、

「よく分からないけど、とりあえずやってみよう」と動いた。

その後TikTokが登場し、短尺動画は世界中に広がりました。

だからといって、「我々は時代を先取りしていた!」なんて言うつもりはありません。

成果出てないから(笑)。

でも、新しいことに挑戦したという事実については、

今振り返るとほんの少しだけ誇ってもいいのかなと思っています。

口には出しませんけどね。

凪でしたから(笑)。

マーケティングは、やってみないと分からない

Vineをゴリゴリに推した上司は間違っていたのか。

最初に「これ、本当に流行るのか?」と思った私が正しかったのか。

今でも分かりません。

上司の、「こういう新しいことをやらないのならマーケティングではない」

という言葉も、今になって考えると完全に間違っていたとは思いません。

新しいものを全部、「実績がない」「効果が分からない」「費用対効果を説明できない」

と切り捨てていたら、新しいマーケティングなんて永遠にできません。

一方で、「若者に流行っているから」「先行者優位があるから」だけで飛びつくのも違う。

たぶん、その間で悩みながら、それでも時にはやってみるのがマーケティングなのでしょう。

そして十数年後。

TikTokという巨大なサービスを横目に見ながら、ときどき思います。

「俺たち、結構早かったんじゃね?」

まあ、TikTokは今もやっていないんですけどね(笑)。

今日のところは、以上!

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