「静かな退職」の何が悪い?――浜ちゃんも山岡士郎も、昔はみんな大好きだったじゃん!、という話

サラリーマンの独り言

mutoです。

最近、「静かな退職」「社内ニート」という言葉をよく目にします。

静かな退職とは、実際に会社を辞めるわけではなく、必要以上に仕事へ情熱を注がず、求められた範囲の仕事をこなす働き方。

社内ニートとは、会社に所属しているものの、十分な仕事を与えられていない、あるいは仕事をほとんどしていない社員を指す言葉です。

こういう言葉が出てくる記事を読むと、だいたい文脈は決まっています。

「けしからん!」というものです(笑)。

確かに、仕事をサボるより一生懸命働いた方がいい。成長しないより成長した方がいい。

○か×かで聞かれれば、そりゃ○でしょう。

でも、本当に会社員全員がそうでなければならないのでしょうか?

昔から「静かな退職」みたいな会社員はいた

そもそも、こういう会社員は昔からいました。

しかも平成初期の人気作品では、むしろ好人物として描かれています。

代表格が『釣りバカ日誌』のハマちゃんこと浜崎伝助。

仕事より釣り。出世なんてほとんど興味なし。

現代の人事用語で言えば、会社へのエンゲージメントが高い社員とは到底思えません(笑)。

ところが私たちは、浜ちゃんを「けしからん社員だ!」と思いながら映画を見ていたでしょうか?

むしろ、仕事や出世に人生のすべてを捧げず、釣りと家族を愛する浜ちゃんを微笑ましく見ていたはずです。

映画『釣りバカ日誌』は1988年に始まり、

『スペシャル』『花のお江戸の釣りバカ日誌』を含めて全22作。

22作ですよ(笑)。

浜ちゃん的な会社員像が社会から嫌われていたなら、これほど長く国民的人気シリーズになったでしょうか。

『美味しんぼ』の山岡士郎も同じ

もう一人思い浮かぶのが、『美味しんぼ』の山岡士郎です。

出世欲は薄い。会社への忠誠心にあふれているようにも見えない。

普段からバリバリ働くタイプでもない。

というかだいたい資料室で昼寝をしている。デスクでも昼寝をしている。

でも、食の問題となれば圧倒的な知識と能力を発揮する。

そして読者は、そんな山岡を主人公として応援していました。

両者とも、仕事というより自分の興味のある所にしか注力しない、

今の感覚で言うと完全にダメ社員です。

でも当時の私たちは、彼らを魅力的な主人公として見ていた。

「会社員だけど、会社が人生のすべてじゃなくてもいい」

という価値観が、普通に受け入れられていたのだと思います。

全員が上を目指さなければならないのか?

もちろん、成長は素晴らしい。挑戦することも素晴らしい。

でも、会社員全員が毎年成長し、毎年去年以上の目標を掲げ、新しいことに挑戦し続ける必要があるのでしょうか。

スーパーサイヤ人じゃないんだから(笑)。

会社員にも、

「今の仕事をちゃんとやります。それで十分です」という人がいていいはずです。

出世したい人は出世を目指せばいい。専門性を高めたい人は高めればいい。

でも、家族や趣味を優先し、「仕事はそこそこでいい」という人まで問題社員扱いする必要はないでしょう。

「終身雇用は難しい。でも成長し続けろ」は都合が良すぎないか

2019年、当時トヨタ自動車社長だった豊田章男氏の

「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」という趣旨の発言が大きな話題になりました。

経営環境が変わっている以上、その主張には合理性があります。

ただ、日本企業全体の流れとして見ると、どうしても引っ掛かります。

会社側は、

「もうあなたの人生を最後まで面倒見ることは約束できません」と言う。

その一方で社員には、

「会社にエンゲージしてください」

「成長してください」

「高い目標を持ってください」

と求める。

いやいや。ちょっと都合よくないですか?(笑)

御恩をやめるなら、奉公も変わる

昔の日本型雇用には、良くも悪くも「御恩と奉公」に近い関係がありました。

会社は長期雇用や年功的な処遇、退職金などで社員の生活を支える。

その代わり社員は、転勤や会社都合の異動を受け入れ、会社に強くコミットする。

完璧な制度だったと言いたいわけではありません。

でも、交換関係としては理解できます。

ハガレンでいう等価交換の法則です。

ところが今は、「御恩はもう保証できません。でも奉公はしてください」

となっていないでしょうか。

もちろん、社員にそれだけの価値がないから、と切り返されたらそれまでですが。

でも、だとしたら社員側が、

「分かりました。では私も会社とは適度な距離で付き合います」

となるのは、ごく自然なことだと思います。

浜ちゃんがいたっていいじゃない

誤解してほしくないのですが、サボることを推奨しているわけではありません。

給料をもらっている以上、任された仕事はするべきです。

他人に仕事を押し付けて自分だけ楽をするのも違います。

でも、

「出世はしたくありません」

「今の仕事を普通に続けられれば十分です」

「会社より家族や趣味の方が大切です」

という働き方まで否定する必要はないでしょう。

猛烈に出世したい人もいる。仕事より釣りが大切な浜ちゃんもいる。

その両方がいて、それでも成果が出るようにするのが組織ではないでしょうか。

むしろそういう組織を作るのが経営者だと思うのですが・・・・。

「終身雇用が難しい」、と経営者が言うのであれば

「会社に人生を預けるのは難しい」、といえなくてはおかしくないですか?

仕事はちゃんとする。給料をもらう。定時になったら帰る。そして自分の人生を楽しむ。

それで会社がちゃんと回っているなら、一体何が問題なのでしょうか。

「静かな退職」なんて大げさな名前を付けていますが、

昔から普通にいた会社員なんじゃないですかね(笑)。

今日のところは、以上!

コメント

タイトルとURLをコピーしました