mutoです。
突然ですが「珠のれん」という単語を知っていますか?
名前は知らなくても画像を見たらわかる人が多いかもしれませんね。
こちらです。

玄関と居間のあいだ。
台所と廊下の境目。
トイレの入口に、なぜかシャラシャラぶら下がっていた、あの紐の束。
今あらためて考えると、
外国人が見たら確実にこう言うと思う。
Why Japanese!?
これ、完全に家庭内しめ縄である
意味不明な紐が垂れ下がり、
触ると音が鳴り、
何も防いでいないのに、なぜか「境界」になっている。
機能はない。
でも意味はある。
構造的には、
各家庭に張られた簡易しめ縄
もしくは
日常に溶け込んだ呪術
と考えると、だいぶしっくりくる。
子供にとっては最高のサンドバッグでした
当然ですが、子供はそんな結界を尊重しません。
- 揺れる
- 鳴る
- 引っ張れる
これはもう、
遊べと言っているようなものです。
結果として、
- 紐が抜ける
- 上からドサッと落ちる
- 親がキレる
という流れが完成します。
毎回怒られていましたが、
今思うとあれは完全に理不尽でした。
あんなものを設置しておいて、
「触るな」という方が無理があります。
子供にとっては、
格好のサンドバッグでした。

機能性? 正直ほぼゼロです
大人になって冷静に見ると、
珠のれんはかなり不思議な存在です。
- 寒さは防げません
- 音も防げません
- 匂いも防げません
はっきり言って、
何ひとつ守ってくれません。
それなのに、
なぜか家の重要ポイントに設置されていました。
謎です。
たぶん、映画の影響です
当時の映画やドラマには、
やたらと「ちゃんとした家庭」が出てきます。

障子、襖、きれいに区切られた間。
ああいう家に、
なんとなく憧れていたのだと思います。
ですが、現実の家は狭い。
お金もない。
襖を入れるほどでもありません。
そこで、
雰囲気だけを、雑に真似する
という選択が行われます。
その答えが、珠のれんだったのだと思います。
平成で言えば、
踊る大捜査線で織田裕二が着たモッズコートや
キムタクがHeroで着たレザーダウンが流行ったのと、
だいたい同じ構図です。


和でも洋でもない、過渡期の産物でした
珠のれんが活躍したのは、
- 和室全盛の時代でもなく
- 洋室が完全に主流になった後でもない
ちょうどそのあいだです。
きっちり仕切るのはやりすぎ。
でも、何もないのは落ち着かない。
この「なんとなく」を、
日本人は昔からとても大事にしてきました。
そして、きれいに消えました
家がきちんと区切られ、
ドアが当たり前になった瞬間、
珠のれんは
誰にも惜しまれずに姿を消しました。
今残っているのは、
- レトロ雑貨屋
- 「あったよね」という会話
くらいです。
珠のれんとは何だったのでしょうか
改めて言うと、珠のれんは
- インテリアでもなく
- 機能品でもなく
昭和の住宅事情と、
理想と現実のズレから生まれた結界
だったのだと思います。
そう考えると、
あのシャラシャラした音も、
少しだけ意味があった気がします。
……とはいえ、
やっぱり子供にとっては
最高のサンドバッグでしたが。
今から
昭和レトロなカフェなんかを開こうとしている人、もしくはすでに開いている人で
まだ珠のれんを導入していない人がいたら、それは大変もったいない。
一気にあなたのレトロ感がレべチになるアイテムですよ!
以前住んでいた場所にあった先頭にこの珠のれんがありましたが
それはそれは素晴らしい昭和感を醸し出しておりました。
ちなみに
昭和後期の家屋を崩壊寸前まで痛みつけた幻のゲームはこちら!
今日のところは、以上!



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