mutoです。
ONE173で青木真也が手塚裕之に負けました。
おそらく、この敗北がそのまま引退に繋がるでしょう。
試合映像を見た瞬間、胸に引っかかったのは、
1ラウンドで仕留め損ねた時点で彼の心が折れたように見えたことです。
試合後の記者会見でも、その諦めを示すような言葉が出てしまった。
本来、プロはそういう言葉を言ってはいけません。
でも、言ってしまうほど、もう限界だったのでしょう。
そして2ラウンド。
ボディーストレート一発でダウン。
MMAでは滅多に見ない倒れ方で、嫌倒れという表現すら浮かぶほどでした。
引退がかかった試合で、ああいう負け方。
それは誰が見ても潮時です。
世間は「42歳までよくやった」と称賛するでしょう。
ただ、私にはどうしても長く続けすぎた末の、寂しい終着点に見えてしまいました。
■ 歪み始めた“青木の格闘技観”
青木のキャリアを見ていて、私が最も引っかかったのは、
彼がプロレスラーとしての活動を始めたあたりから、
格闘技観が微妙に歪み始めたことです。
YouTubeでは「作品だ」「仕事だ」と繰り返していました。
その言葉自体は、プロレスであれば正しい。
しかしMMAは「作品」で済ませていい世界ではありません。
残酷なまでの「競技」であるはずです。
トップを目指さず、危険だけを背負う選手ほど危ない存在はない。
金を払い、応援するファンに対しても、その競技に真剣に打ち込む選手に対しても失礼です。
あの割り切り方をした時点で、本来は格闘技を辞めるべきだったと私は思っています。
■ DEEPからDREAMへ──“天才の物語”を追った日々
格オタ30年の私は青木とほぼ同年代です。
DEEPウェルター級トーナメント準優勝の頃からずっと見てきました。
大学生のくせに修斗のランカー池本誠知を完封して一本勝ちした時の衝撃。
これは本当にびっくりしましたね。
決勝で中尾寿太郎に豪快にKOされても、“時代の到来”を確信できる選手でした。
その後菊池昭に勝って修斗ミドル級王者になった際の「一生修斗しかしません」宣言を経ての、
静岡県警入り。
そして早々に退職して格闘技復帰。
この破天荒さが良いという人もいるでしょうけれど、私は好きになれませんでしたね。
でも注目すべき選手であったことは事実です。
復帰後PRIDEで暴れまくりで存在感を放ちながらも、まさかの団体消滅。
あのままPRIDEが続けば実現していたであろう五味戦が見られなかったのは、今でも心残りです。
■ DREAMの頂点──川尻戦と、異様に眩しいプロポーズ
PRIDEの後継団体DREAM.15での川尻戦。
私は現地で観戦していました。
記者会見や取材で見せたピリピリした雰囲気でしたが試合自体は派手さの無い内容。
青木がアキレス腱固めで淡々と勝利。
内容的には完全に置きに行ったといわれちゃうような内容ですが、
本来格闘技とはそういうものだと思います。
それだけ選手が必死に勝利をつかみに行く姿こそ美しいと私は思います。

それはさておき、その後のリング上のプロポーズは忘れられません。
観客全員が驚き、照れ、最後には拍手するという不思議な瞬間でした。
その後、奥さんとなったその女性とは別れたようですが、
あの日のリングには確かに“幸福な空気”が流れていました。
青木真也が本来なりたかった純粋さが滲んでいた瞬間でもありました。
■ 「元気ですか!! 2011」──残酷としか言いようがない北岡戦
元気ですか!! 2011での北岡悟戦。
あれは今でも、寒気がするほどの**“残酷な勝利”**でした。
フィニッシュできる場面は何度もあった。
しかし青木はあえて仕留めず、淡々とコントロールし続け、判定まで運んだ。
まるで、
「これが実力差だ。お前は絶対に追いつけない。」
そう突きつけるような戦い方でした。
私は鳥肌が立つほどの無慈悲さを感じましたし、
あれこそ青木の“強さのピーク”だったと思います。
■ ONE X・秋山戦──強がりが崩れた日
そして、ONE Xの秋山成勲戦。

煽りまくり、空気を作り、逃げられないカードに仕立てはしたものの
1ラウンドで力を使い切り、2ラウンドで急失速してKO負け。
そして試合後の号泣。

あの涙には、私も思わず胸が締めつけられました。
強がり続けた男の、あまりに人間的な崩れ方だったからです。
私はあの瞬間、彼はもう戦えないだろう
と直感しました。
本当は、あそこで引退すべきだったと思います。
■ 「愛され方を知らない中学の不良」──私にとっての青木真也
青木真也という選手を振り返ると、私はひとつの比喩に行き着きます。
愛されたいのに、それを口にできない。
表現できない。
可哀そうなほど不器用な、中学の不良。
強がって、尖って、敵を作って、でも内心では誰よりも承認を欲している。

怪物のように強いのに、決してメインストリームにはなれない。
でもそれは自分の行いのせいでもあったと思います。
正直会社でもそういう人っています。
仕事はできるのに、拗らせちゃって出世できず、結局老害とされてしまっている人。
とにかく長い戦い、お疲れさまでした。
ここまで来たら自分で作り上げたキャラを守り抜き、
令和の「いじわるばあさん」となり、最後まで老害でい続けてほしいと思います。

今日のところは、以上!
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