mutoです。
ニデック創業者
永守重信
氏が会社経営から完全に身を引きました。
日本の経営史に残る人物の退場です。
ただし、今回の辞任は単なる勇退ではありません。
ニデックが設置した第三者委員会の調査では、グループ内で発覚した不適切会計の背景として
過度な業績プレッシャーとガバナンス不全が指摘されました。
さらに報告書では、永守氏について
一部の不正を容認したとの評価は免れない
とされ、経営トップとしての責任が厳しく言及されています。
これを受け、永守氏は代表取締役を退き、2026年2月には名誉会長も辞任しました。
名実ともにニデック経営から完全に退くことになります。
かなり重いニュースです。
ただ同時に思うのです。
人には必ず、光と影があります。
光 ― 世界企業を作った創業者
永守氏の功績は疑いようがありません。

京都の小さな会社からスタートし、日本電産(現在のニデック)を世界企業へ育て上げました。
モーターという分野で世界トップクラスの企業を作った。
これは日本の経営史に残る功績でしょう。
スポーツ界に例えるなら、
イチローや野茂英雄のようなまさにレジェンド的存在です。
影 ― 巨大企業になった後の歪み
一方で今回の問題は、企業統治の弱さを浮き彫りにしました。
ニデックは
- 従業員数数万人
- 世界各地に拠点
- 売上数兆円
という巨大企業です。
はっきり言えば、
到底一人の人間が責任がとれる規模ではありません。
それでも創業者中心の経営が続けば、
組織にはどうしても歪みが生まれます。
今回の問題は、その歪みが表に出てしまったものだったのだと思います。
私が日本電産の面接を受けたときの話
このニュースを見て、私は25年前のことを思い出しました。
まだ会社名が「日本電産」だった頃、私はこの会社の新卒採用試験を受けていました。
書類選考を通過し、人事との面談。
その日程を見て少し驚きました。
土曜日だったのです。
人気のない事務所に伺い、薄暗い会社で面談中に人事の方からこう言われました。
「うちの会社は土日に働くというのは普通にあります」
その一言で、会社の文化がかなりはっきり伝わってきました。
「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」
ニデックといえば有名な言葉があります。
「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」
永守氏の経営哲学です。
この思想は確かに会社を急成長させました。
結果として
- モーター世界トップ企業
- 積極的なM&A
- 売上数兆円企業
へと成長します。
これは間違いなく成功した経営モデルです。
ただし、その成功モデルが巨大企業になった後も続いたことが問題だったのかもしれません。
創業者企業に起きやすい構造
創業者企業では次の構造が生まれやすくなります。
1
創業者が圧倒的に強い
2
周囲が逆らいにくい
3
忖度文化が生まれる
4
ガバナンスが弱くなる
成功体験が強ければ強いほど、この構造は固定化されます。
結果として
「まず数字を合わせろ」
「とにかく未達は許されない」
という空気が生まれやすくなります。
制度より空気が強くなる。
これは多くの企業で見られる現象です。
ただし責任は創業者だけではない
今回の問題を「創業者の暴走」で終わらせるのは簡単です。
しかしそれでは本質を見誤る気がします。
会社には本来、経営者をチェックする仕組みがあります。
- 社外取締役
- 監査役
- 監査法人
いわゆるガバナンスの装置です。
しかし今回の問題は長い間表面化しませんでした。
つまり
止められなかった
という事実が残ります。
創業者が強いのはある意味当然です。
だからこそ、その暴走を止めるために監査や社外役員の制度が存在している。
その機能が十分に働かなかったのであれば、
そこにも当然目を向けなければならないと思います。
予防のコストは圧倒的に安い
医療の世界ではよく言われます。
病気は治療より予防の方が圧倒的にコストが安い。
企業不祥事も同じだと思います。
問題が起きてから対応すると
- 株価下落
- 信用失墜
- 訴訟
- 組織混乱
そのコストは膨大になります。
しかし内部統制や監査など、
予防の仕組みは本来そこまで大きなコストではありません。
だからこそガバナンスは
不祥事の後処理ではなく、予防の仕組み
であるはずなのです。
見逃してはいけないこと
ここで永守氏のパーソナリティをあれこれ論じるつもりはありません。
ただ一つ言えることがあります。
個人の暴走を止めるためにあるはずのガバナンスが、機能不全を起こしていた。
この事実だけは、社会として見逃してはいけない。
私はそう思うのです。
(参考)
今回の問題については、ニデックが設置した第三者委員会の調査結果および各種報道を基に整理しています。


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